追悼:石井桃子さん
2008年4月2日
児童文学翻訳家の石井桃子さんがご逝去されました
子どものころ手にとった本は
石井さんが翻訳にあたられたものが多かったので
私は石井桃子さんという方から、いろいろな話をたっぷり聞いて育ったような気がします
石井さんがいらっしゃらなければ
日本の翻訳文化はこれほど活発にならなかったのではないか
私が幼い頃読んだ様々な本を
石井さん以外にどなたが紹介して下さっただろうかと
あらためて、その存在の大きさを感じます
石井さんが外国の絵本の上にのせた日本語は
声に出して読んだとき、音楽的な響きがありました
絵本の挿絵とあいまって、外国の香りが漂い
よりいっそう異文化への憧れを感じたものでした
むかし むかし、ずっと いなかの しずかな ところに
ちいさいおうちが ありました。
それは、ちいさい きれいなうちでした。
しっかり じょうぶに たてられていました。
この じょうぶないえを たてたひとは いいました。
「どんなに たくさんの おかねを くれるといっても、
このいえを うることは できないぞ。
このいえを うることは できないぞ。
わたしたちの まごの まごの そのまた まごのときまで、
このいえは、きっと りっぱに たっているだろう。」
このいえは、きっと りっぱに たっているだろう。」
“The Little House” by Virginia Lee Burton
「ちいさいおうち」バージニア・リー・バートン著 石井桃子訳
おおきな にわの まんなかに
かわいい いえが ありました
ふわふわさんに ふわおくさん
2ひきの うさぎが すんでます。
“nijntje” by Dick Bruna
「ちいさなうさこちゃん」ディック・ブルーナ著 石井桃子訳
れたすをたべすぎると「さいみんやく」のようにきくということです。
わたしは れたすをたべて、ねむくなったことは ありません。
もっとも わたしは、うさぎではありませんけれどね。
でも、プロプシーのうちのこどもたちには、
たしかに さいみんやくのようにききました!
たしかに さいみんやくのようにききました!
“The Tale of the Floppy Bunnies” by Beatrix Potter
「フロプシーの子どもたち」(ピーターラビットミニチュア絵本第2集)
ベアトリクス・ポター著 石井桃子訳
ベアトリクス・ポター著 石井桃子訳
おかしなことじゃ
あるけれど
もしもクマが
ハチならば
巣を木の下に
つくったろ
そうすれば、(ハチは
クマだから)
こんなにのぼらず
すむのにな
“Winnie the Pooh” by A. A. Milne
「クマのプーさん」 A. A. ミルン著 石井桃子訳
「この塀がちゃんと塗れる子は、千人にひとりか、
二千人にひとりもいないぐらいだと、おれ、思うな」
「まさかーーそうかい? だけど、なあ、いいじゃないか。
ちょっとやらしてみろよーートム、おれがきみなら、やらせるな。」
「ベン、ほんとにおれだってやらせたいんだよ。
でも、ポリーおばさんがなあー」
“The Adventure of Tom Sawyer” by Mark Twain
「トム・ソーヤーの冒険」マーク・トウェイン著 石井桃子訳
「ああ、ばかなまねはよしてくれたまえ!ヒキガエル君!」
“The Wind in the Willows” by Kenneth Grahame
「たのしい川べ」ケネス・グレアム著 石井桃子訳
そのほかにも、数々の名作
101年前の、きっと桃の時期にお生まれになったのだろう
石井さんは、翻訳という作業を通して
彼女の心に映った景色をそのまま、私たちに見せて下さいました
その景色は、どれもこれも緑に溢れ、とてもいい香りのするものでした
明治、大正、昭和、平成と長い長い時代を
日本中の子どもたちに寄り添って、旅してこられた方
春の花々に包まれて
安らかにお眠りください
Comments
石井桃子さんのノンちゃん雲に乗る、をとても小さい時にずっと読んでもらっていました。 その後で、彼女のたくさんの翻訳絵本に出会い、児童文学に出会い、そして、数年前には石井桃子さん翻訳のファージョンの全集を買いました。
彼女がいなければ、日本の子どもの本の世界は随分違うものではなかったかと思います。
たとえば、ファージョンは、故郷のイギリスではほとんどの本が絶版になり、読みたくても、なかなか読めなくなりました。イギリスでは図書館にもなかなかないのですよ! でも、日本ではあんなにみごとな全集があり、岩波少年少女文庫があり、それを可能にしたのは、ファージョンに対する桃子さんの情熱であり、彼女の素晴らしい日本語の翻訳だったと思います。
えびさんが集めてくださったどの絵本も、児童書も、表紙を見ただけでなつかしさがいっぱいです。
石井桃子さん、ありがとうございました!
みんなみんな必ず1冊は石井さんが翻訳した本を読んだはずです。
彼女がいなければ日本の絵本文化は大きく変わっていたかもしれませんね。
今、Wikipediaで彼女が翻訳した作品一覧を見てましたが
ほんとに沢山の作品を手がけてこられたのですね。
アレも、コレも「あっ読んだ読んだ」というタイトルです。
洋書だったのかと初めて知った絵本もありますw
ご冥福をお祈りいたします。
階段を下りる時に、一段ごとに頭を打って痛いだろうな、という忘れられない印象の「クマのプーさん」が最初の出会いでした。
石井桃子さんのことは、そんなに詳しく知りませんでしたが、これからもたくさんの子ども達に読んでほしいですね。心をホッと暖かくしてくれる世界を見せてもらいました。
Dillさん、ありがとうございます。
石井さんがお亡くなりになるつい一日前まで、「たのしい川べ」を読んでいたので
ニュースを聞いた時はほんとにショックでした。
何か私なりに追悼となることができないだろうかと思いまして
図書館へ足を運んでみると、図書館の児童書コーナーに並んでいる本の
あちこちに石井桃子さんの名前があって、ほんとにすごい方だったんだと
実感しました。
Dillさんはファージョンがお好きなんですね。
ファージョンが大好きだったという人を何人か知っています。
イギリスでは絶版なんですね!
あの本を日本で価値あるものにしたのは、ほんとに石井桃子さんの情熱ですね。
今、石井桃子さんが87歳の時に出版された「幻の朱い実」を借りてきて
読んでいるところです。
80代の方が書いたと思えない作品ですよ。すごく面白いです。
ファージョンも含め、まだまだ未読の石井作品がたくさんあるので
ちょっとずつでも読み進めていきたいです。
PointGuardさん、ありがとうございます。
今回初めて石井桃子さんの生年月日を知りまして
私が生まれた時に石井さんはすでに××才だったんだ、と思うと
ほんとに感慨深いです。
実家にはあまり絵本がなかったのですが(もっぱら図書館利用でした)
「ちいさいおうち」の一冊だけは、家にあったのです。
多分、母が好きだった本だと思うのですが、
私も、この本が翻訳本だったとは、大人になるまで知りませんでした。
翻訳を手がけた作品は200作品を越すとかで、
どれくらい人生の時間をつぎ込まれたんだろうかと思うと、頭が下がります。
PointGuardさんのお子さんにも読み継がれていくのですねー。
石井桃子さんもきっと喜んでいらっしゃるのではないかと、思っています。
mayakoさん、ありがとうございます。
「クマのプーさん」は、私も忘れられない作品です。
「痛そうだな」というシーンは数多く、かえってそのとぼけた感じに笑いを誘われましたね。
そうですね、石井桃子さんの本は、字を習いたての時代の子どもから
自分の力で一冊読めるようになった子どもたちや、大人まで楽しめる作品が多いので
これからもたくさんの方たちが、手にとって下さるといいなと思いますー。
こんばんは、
私のブログのコメントにちょっと書いたように、犬養道子さんの「星々と花々と」という自叙伝に、石井桃子さんの若いころのことが出てきて、そのイメージがとても鮮烈でした。 もう一回読みたいけど、本が手元になくて残念と思いつつ、インターネットで調べると、その本を含め、石井桃子さんの若い頃について詳しく書いてあるブログに行き当たりました。
19回の連続ですが、とても印象深い内容でした。 24歳の頃の石井桃子さんが生き生きと伝わってきます。よろしければ、どうぞ。
http://numabe.exblog.jp/6968045/
うちには"ちいさいおうち"がありました。
もしかすると母の絵本だったのかな。
僕が読んでいた時点でカバーの端が擦り切れていました。
以前ku:nelの表紙になっていて、
どきっとしたのを憶えています。
残念ながら印象に残っているのは絵のほうで、文のほうは
それほど憶えていません。
でも石井さんがこの本を選んで訳してくださったから、
絵本を読めたんですよね。
Dillさん、こんばんはー。
素晴らしいサイトのご紹介、ありがとうございました。
Dillさんがおっしゃっていた犬養さんの「星々と花々と」を
週明けにでも図書館へ行って探してみようと思っていたところだったので
19章の連載、とても興味深く読ませていただきました。
ますます「星々と花々と」興味を持ってしまいましたので
他の色々な書籍とともに、見つけてこようと思っています。
石井さんの真摯な姿勢は、ほんとうに様々な方を魅了してやまなかったのですね。
RRRさん、ありがとうございます。
「ちいさいおうち」RRRさんのお宅にもありましたか!
しかもカバーの端が擦り切れるほど、愛された一冊だったのですね。
「ちいさいおうち」は、実は文章量がとても多くて、
子どもが一冊読むには、大変な本なのですが
あの絵本はおっしゃるとおり、絵がとてもきれいで、絵を目で追っているだけで
物語の内容がすべてわかってしまうという、絵本のお手本のような絵本だと思います。
石井さんが翻訳するために選ばれた本は、どの本もほんとに素晴らしかったです。
えびさん,
うっかり間違えました
「花々と星々と」犬養道子です。
図書館の検索で見つからないところでした!
了解です!
早速、借りてきました。「花々と星々と」。初版昭和49年です。
さすが図書館、クラシックなものには強いです。
他にもミルンの自伝"It's TOO Late Now" 石井さんの訳です。
2冊ともかなりなボリュームなので、5月の連休までかかるかも…。
でも、読みます!
石井桃子さんはお名前をしっている、というくらいでした。
でも、えびさんがあげてくださった絵本、知っているものばかりです。
すてきな方だったんですね。
ちいさいおうち は、今でも大好きな本です。
ピーターラビット は、100年のときにがんばって買いました。
当時のわたしにとってはちょっと高価だったので、全部は買えませんでしたけど。
プーさんも、むぎと王様もひきがえるも。
忘れていたけど、そうだ、わたしの一部はこんな絵本たちでできているぞ。
そんな感じです。
石井さんの翻訳絵本、図書館で探してみます。
本のことは作家さんも翻訳家さんのこともほとんど知りません。
だから、えびさんがこうして取り上げてくださるのを読むのはとても楽しいです。
chocolate maniaさん、ありがとうございます。
そうか、choco maniaさんの一部分は石井桃子さんの絵本で出来上がっているのですねー。
どうりで、お花と小鳥と動物がお好きなわけですね。
ピーターラビット100周年の時は盛り上がりましたもんね。
大人になってからの大人買い、ステキです。
私はレタスの巻しか覚えてないんですけど、すごい量ですよね。
石井さんが翻訳したお話というのは、すべて一本芯が通っているような気がするのです。
絵本がそのまま石井さんの心を写した世界だったのではないかと。
名前は知らなかったけど、絵本は覚えてる、というのは
翻訳家さんにとっては、とても名誉なことですねー。
石井さんもきっと喜んでいらっしゃることでしょう。
ふたたび、おはようございます。
私もささやかですが、ブログで石井桃子さんのことを偲ぶ記事を書きました。
その中で、えびさんの記事をリンクさせていただきました。
私もこの絵本の表紙をみて、とてもうれしかったので。
ありがとうございました。
ところで、私もミルンの自伝読みたかったんです。 いいなぁ!
ウチの市の図書館は、中堅の古典にとても弱いんです。
ファージョンもほとんどないし、アーチャーの100万ドルもないし、
ミルンの自伝もなかったです。
アメリカの最新流行小説もいいけど、
イギリスのちょっと古い小説も大切にしてほしい~と、
日本人の私が思うのも変ですが・・・
Dillさん、ありがとうございます!
ミルンの自伝は、Dillさんが日本に帰国されるのを
図書館でじっと待ってますよ。大丈夫です。
でも、自国の誇りである蔵書が図書館に置いてないなんて
ケント州、もうちょっとがんばんなさい!って感じですねえ。
気がつかなかったけど、日本の図書館ってレベル高いのかしら。
確かに、古典物で欲しい資料とか、見つからなかったってことがあまりないですね…。
自国文化のよいところを、あらためて発見。
>気がつかなかったけど、日本の図書館ってレベル高いのかしら。
そうかもしれませんねー。そして同じくらいに日本の翻訳者たちの意識も高いのでしょうね。
Amehareさん、ありがとうございます。
私はノンちゃんは未読なのですよー。
映画にもなったらしいですね。すごい美人親子だったとか。
日本の翻訳文化って、やっぱりすごいですよね。
日本人って文学に対して意識が高い(ような気がします)し
緻密な作業をする方が多いから、翻訳そのもののレベルが高いのかもしれませんねー。
たとえば楽天的な気質の某国(どこでもよいのです)だと
翻訳をしようとする人自体が少ないのではないかなーと、思ったり…。
「やってられるか!」みたいな。(暴言)